以下は全て↓からの抜粋
※太字などの強調は個人による
http://blog.tatsuru.com/2025/12/24_0750.html
すでにアメリカは「帝国の縮小期」に入っています。英国は「世界帝国の縮減」のモデルケースだと思います。アメリカ帝国も今後数十年かけて英国をモデルに縮減してゆくことになると思います。
トランプが高市の「台湾有事」発言について訊かれた時に、「同盟国は友人ではない。彼らはアメリカから搾取している」というコメントをしたことの意味がよく理解できなかった人が多かったようですが、ここで「同盟国」というのは日本のことです。トランプからすれば当然の発言です。相手がロシアであろうと中国であろうと日本であろうと、「陣営」というようなイデオロギー的な境界線はもう存在しない。ただ「アメリカにとって損か得か」だけを基準に外交的判断を下すというのが今のトランプ外交です。
アメリカは同盟国に防衛費の増額を求めていますが、これは「アメリカが撤退した後は自分たちで何とかしろ」というメッセージと「アメリカの兵器産業に稼がせろ」というメッセージを同時に発信しています。
在日米軍、特に海兵隊はすでにグアム・ハワイ・米本土への移転が進んでいます。南西諸島への軍備増強は「中国と戦争するとしても、それは自衛隊の仕事だ。米軍は後方支援だけ」という意思表示です。左派は「アメリカがする戦争に日本が巻き込まれるリスク」を強調しますが、実際にはアメリカは「日本がする戦争にアメリカが巻き込まれるリスク」を軽減しようとしています。
米中首脳会談では中国に大きく譲歩するかたちで関税問題が一段落しましたが、その直後にトランプは「G2が間もなく始まる」と発言をしました。いずれも覇権を求めない「戦わない米中」がその圧倒的な軍事力と経済力を背景に世界を二元的に支配するというアイディアだと思います。
アメリカは必死に「AI軍拡」を進めている。もう生身の兵士は使わない。ロボット、ドローン、無人戦闘機、無人艦船、ネットへの侵入、宇宙からの攻撃で戦況を決定するという新しい戦闘形態へシフトしています。敵軍の通信システムをハッキングして指揮命令系統を寸断すれば、戦わずして敵を無力化しできる。米中のいずれか先にこの戦争テクノロジー上のブレークスルーを達成した方が勝つ。でも、まだ米中どちらも圧倒的な技術力の差を示すには至っていません。だから、それまで「できるだけ多くのリソースをAI軍拡に注入すること」と「技術的ブレークスルーを達成するまでの時間を稼ぐ」ことが戦略的な優先課題になります。これは中国も変わらない。ミサイルで台湾のインフラを破壊してしまったら侵攻する意味がない。「無血開城」のためにはやはり軍の通信システムをハッキングして、指揮系統が機能しなくなるというのが最も効率がよい。
ですから「当面は」米中戦争はないというのが僕の診立てです。でも、アメリカとしては何としても中国の東方進出は阻止したい。でも、米中戦争はしたくない。だから、「米軍は後方支援に徹して前面には出ない。日韓台に戦わせて、三国の犠牲で中国の兵力を削る」というシナリオがとりあえずのベストだということになります。
米中両国が戦争を回避しようとしている時に、日本ひとりがいたずらに緊張を高めている。状況が理解できない愚かなプレーヤーと言うしかありません。
中国には切れるカードがありますが、日本には対中国で切れるカードがありません。すでに勝負は決している。でも、高市首相はいつまで経ってもこの事実を認めない。中国が圧力をエスカレートするごとに日本の国益は損なわれる。政府はメディアを利用して「反中国世論」を形成して、ナショナリズムで政権浮揚力を維持しようという考えでしょうけれども、そんな煽りは国内向けには有効かも知れませんけれど、国際社会には通用しません。今回の高市発言については、日本の味方をしてくれる国も国際機関も存在しません。いずれどこかの段階でトランプの「もう高市を辞めさせろ」という意を受けた自民党の一部や損害に音を上げた財界が「高市おろし」を始めるでしょうけれど、それまでに一人の政治家の軽率のせいでどれほどの国益が失われるか、考えると絶望的な気分になります。
中国の反日感情は基本的に官製であり、国民に深く根差したものではありません。終戦時、中国大陸には200万人の日本の軍人・軍属がいましたが、蒋介石はラジオで「以徳報怨」を唱え、危害を加えないよう呼びかけました。事実、民間人含めてほとんどが無事に帰国した。1972年の日中共同声明で中国は戦争賠償の請求を放棄しました。日中戦争の中国側被害者数は最新の研究では軍人民間人合わせて2000万人から2500万人と言われていますが、この人的被害に対して賠償請求をしないと中国が言った。ソ連に武装解除された兵士たちは57万人がシベリアに抑留され、長期にわたる強制労働でその1割が死亡しました。先の戦争について言えば、中国人は明らかに例外的なまでの雅量を示した。このことに日本人はまず謝意を表すべきだと僕は思います。
しかし、戦中派のこのような中国に対する感謝の気持ちは、国民的な記憶としては語り継がれませんでした。いま戦前の軍国主義を肯定するような言動を繰り返し、反中ナショナリズムを煽っている政治家や言論人は日清戦争以後の中国に対する日本の加害事実についても、中国人が敗戦後の日本人に示した寛容について無知であるか、無知を装っているのだと思います。
日米同盟基軸がもう賞味期限を超えつつある以上、新しい安全保障構想が必要です。僕が提案しているのは「日米基軸」から「アジア連携」へのシフトです。ただ、アジア連携を果たすためには、戦前のアジア主義をきちんと総括しなければならない。戦前のアジア主義は中国や韓国と連帯して欧米列強の脅威に対抗しようとするもので、日本のアジア主義者たちは韓国の金玉均や中国の孫文らを積極的に支援しました。しかし、「連帯」の素志はシームレスに「指導」「支配」に変質し、ついに「侵略」に行き着いてしまった。
戦前のアジア主義がなぜ失敗したのか、その痛切な総括の上に、もう一度「アジアの同胞と連帯する」道を目指す。それは日本人を含むアジアの戦争犠牲者たちを鎮魂し、歴史問題を乗り越える道でもあります。その先には必ずアジアの共存共栄があるはずです。
(『月刊日本』11月27日 聞き手・構成 杉原悠人)