2009年10月25日日曜日

遍路日記09~二十八日目

2009年10月25日(日) くもり時々雨

☆行程
(2:30)久万公園(発)→(6:50)45番「岩屋寺(いわやじ)」→46番「浄瑠璃寺(じょうるりじ)」→47番「八坂寺(やさかじ)」→48番「西林寺(さいりんじ)」→49番「浄土寺(じょうどじ)」→ひげ坊主さん宅(ゴール)

☆費用
食費:¥0
合計:¥0

いよいよ本日が最終日である

な訳で、最終日には最終日らしいエピソード…

この日の朝は、何時もにも増してハッキリと目が覚めた

腕時計を見ると4:50AM
何時も通りの起床時間である

その頃の四国は6時にならないと明るくならなかったし、ここから岩屋寺までは街路灯もなさそうな道だったが、幸か不幸か歩き始めてすぐに(街灯もある)長いトンネルがあったので、そのトンネルを抜ける頃には明るくなっているだろうと、これまた何時も通りに5:20に出発

ここで、前置きを二つ程…

☆まず一つ目
この何日か前に道中を御一緒した人から「チョッと前に遭った本職の僧侶の方から"○○トンネルには幽霊がいる"旨の話を聴いてからは、全てのトンネルが怖くて仕方ない…」という話をマタ聴きして以来、僕もトンネルは大の苦手になってしまった

☆次に二つ目
45→46も所謂「遍路ころがし」と言われる"行って戻ってくる"コースだったため、参拝道具以外の荷物は全て発着点に置いて出発したのだった

そんな訳でこの日もトンネルは急いで出口まで走り続けたのだったが、予定では薄明るくなっている空が依然として真っ暗闇なのである…Why!?

これは流石に可笑しいと、今度は携帯電話の時計をチェックしたところ…

2:50AM

これがどうやら日本標準時刻らしい

ここで改めて腕時計の日時を見ると、日付は2000年の1月1日であった…

実は僕の腕時計はソーラーパワーなのだが、最近の寒さで夜通し寝袋の中に腕を突っ込んだまま寝ているせいか電池切れでリセットされていたのに、ようやく此処で気付いた次第である

ヤレヤレ…

補足
同じ事件は、佐渡トライアスロン大会のスタート前にも起こった(幸い、その時は隣の人に現在時刻を聴いて事なきを得た)ことから、どうやら僕の御先祖様は、大事な時に限って↑のような悪戯をするのが好きなのかもしれない…

ここで、今の僕の状況を再確認すると

午前3時の久万高原町の山の中で、寝袋や防寒具は一切無し…

敢えて強調させて戴けるなら…

町の名前に"高原"が付く位の標高の地で、トレーニングジャージ上下だけの格好である

かと言って昼間ならともかく、丑三つ時と知ってからではあんな長いトンネルをもう一度潜りたくもないし、もう40分近く歩いたので戻りたくないのが真情ではある

すると、500m位前方に明りが見えたので取り敢えず歩いて行くと、幸いにも休憩所と公衆トイレがあった

先ずは東屋で横になってみたが袖壁の隙間から吹き付ける風の冷たさはとても眠れるような状況ではなく、それに元々眠くなくてパッと目覚めた訳だから再度眠りに付くなんて無理な話である

それで今度はトイレに避難してみると、風の方は遮れられたが、如何せん此処のトイレはセンサーによって照明が自動点灯する仕組みであった
願わくは暗い状態で自然に眠気を誘ってくれたらと思っていたのだが、チョッした動きも見逃してくれないセンサー君の監視には直ぐ降参、この時点で寝ることは完全に諦めた

便利な世の中というのは得てしてこんな風に、基本的な人間の営みの邪魔をするものであると深く実感する…

さて…

朝までは未だタップリ時間はあるのだが、何もする事はない…

という訳でここは折角だからと、トイレの中で一番安らげる方法は何かと色々模索してみた

先ずは、床の長辺方向に屈折して寝てみたが、タイルの冷たさと寝返りも打てない窮屈さで即却下

次に、便器前の短辺方向の床に体育座りで休んでみたが、これまたお尻と足首が痛くて却下

結局は矢張り、素直に便座に座るのが一番耐え得る姿勢であると学習した

さてさて…

それにしても未だ2時間以上あるのだが、当然何もする事はないし、寒さも更に深みを増していくようだった

そんな折、ふと便座の後ろをみて見ると…

「この便座には温座機能が付いているではあ~りませんか!」

御先祖様は最後の最後で粋な計らいをしてくれるらしい

コレが最後の御祈りとばかり、抜けていたコンセントを指し込み、ダイヤルを「高」に回すと…

ブラボー

この便座への感謝の念は、今でも忘れられない事の一つである

便利な世の中というのは得てしてこんな風に、基本的な人間の営みの中に一時の快楽を与えてくれるものであると深く痛感する…

これで何とか朝までは耐えられる事を確信してからは一気に元気が復活し、今度は今持っている備品をチェックすると、暖を取る道具は他にも多数あることが判る

先ずは当然のことながらローソク
これをトイレットペーパーホルダー上に灯し立て、手をかざして暖めたら更に体感温度は上昇した

次に新聞誌
コレを衣服間に挟んだだけでも効果ありとは前から聴いていたが、こんな所で実証することになるとは思いもしなかった

最後は判衣…
コレは本来、棺桶に入る時に着るモノであるらしいが…
まさか、こんな所で、こんなにも早く袖を通すことになるとは…(笑)

そんなこんなしている内に何時の間にかウトウトとなったのだったが…

頭を"コクリ"としただけで働き者のセンサー君がキチッと反応し僕を起こしてくれたのは、恐らくお大師様からの試練なのだろう

まぁそんなこんなを繰り返しながらも、ようやく日本時間の「5:30」となる

四国御遍路の最終日は、光栄にも二度出発する破目に相成ったのだった

(後編に続く…)

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